入社2年目で販価データの「箱」を作った話
私が入社した頃、見積書はすべて手書きだった。
担当者がそれぞれ自分のやり方で計算し、自分の書式で客先に提出していた。客先との「値決めルール」は一応あったが、それ以外は担当者次第。部品点数は膨大で、半年ごとに賃率を全部見直す値引き交渉もある。どの担当者が何を根拠にいくらで売っているか、会社として把握できていなかった。
入社2年目、私はこれが気になって仕方なかった。理由は単純で、「このやり方では数字を積み上げることができない」と思ったからだ。根拠のない価格は、交渉になったときに必ず揺らぐ。値引きを求められた時に、どこまで下げられてどこから下げられないのかが分からない。
そこでやったのが販価データの「箱作り」だ。見積書のフォーマットを統一し、材料費・工賃・管理費を分けて記入できる定型フォーマットを作った。次に事務所のスタッフ総出で、過去の手書き見積書をAccessを使ったシステム上でデータ化した。膨大な作業だったが、これで社内製品すべての原単位が一元管理できるようになった。
振り返ると、一番大変だったのは技術的なことではなかった。スタッフ全員に「なぜやるのか」を理解してもらい、単調なデータ入力を続けてもらうことだった。仕組みを設計するだけでなく、運用を根付かせることまでやり切って初めて機能する。仕組みと運用はセットだ。25年前の経験が今のコンサルティングの原点になっている。
この「箱」を作ったことが、その後のすべてのベースになった。原価との比較ができるようになり、価格交渉の根拠が明確になり、2022年のインフレ転換時にも積み上げデータで交渉を有利に進められた。
入社2年目の自分が「必要だ」と判断してやり始めたことが、25年後も機能し続けた。地味な積み重ねが資産になる——そのことを最初に実感した経験だった。
